壁を超える“平和の音楽” BABYMETALロンドン公演レポート 2014.11.8 O2 ACADEMY BRIXTON

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Photo:Dana (distortion) YAVIN

BABYMETAL @ O2 ACADEMY BRIXTON , LONDON , UK 8.NOV 2014

海外ツアーの盛り上がりや、1stアルバム『BABYMETAL』の世界的チャートイン、そしてレディー・ガガの海外公演へのオープニングアクト起用…。今、「メタルとアイドルの融合」を標榜するメタルダンスユニットBABYMETALが日本のみならず海外シーンで盛り上がっていることをご存知の読者も少なくないはず。そうした状況も踏まえ、今回AMPでは彼女たちの2度目のロンドン単独公演のライブレポートをお届けします。東京から現地ロンドンに向かったのは、それまで懐疑的だったにも関わらず、YouTubeで海外フェスにおけるパフォーマンス映像に興奮し、サマーソニック2014で初めてライブを目撃してベストアクトに挙げた編集長・照沼です。メタルファンでもアイドルファンでもない彼が観たBABYMETALとは?

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大雨の中、名門ブリクストンアカデミーを一周する開場待ちの行列


ライブを観るまでもなく、海外におけるBABYMETALの盛り上がりは本物だった。

洋楽ファンにはその名も馴染み深いブリクストンアカデミー(現在はネーミングライツによりO2 ACADEMY BRIXTONと変名)。5000人のキャパシティーを誇るロンドンでも特に大きな会場ながら、BABYMETALは2回目のイギリス単独公演にしてソールドアウトしてしまったのだ。さらには、開場前の行列が会場敷地をぐるりと一周するという光景まで作ってしまっていた。そもそも「開演」ではなく、あくまで「開場」だ。今入ってもスタートまで2時間以上待たされるのにこの行列…。しかもこの日は途中から一時大雨。多少は弱まったものの、ずっと雨が降り続けているし、大半の客は傘を持っておらず、ずぶ濡れの状態ときた。なんと気温は5度程度だ。

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客入れSEで合唱するメタラー、セルフィーに興じるガールズ、繰り返されるBABYMETALコール


日本人として誇らしいという気持ち以前に「いくらなんでもここまでするか!?」と思わずにいられないほどだったが、その熱気は入場後も高まっていく一方。メタラーたちは、UKメタルバンドの楽曲ばかりで構成されていたという客入れSEに合わせて合唱し、誰かが自撮りのため、もしくは単純に撮影しようとフロアにカメラを向ければ、みんながそれに対してキツネサイン(メロイックサインのBABYMETALバージョン)や拳を振り上げて対応。開演直前には、ローディーがサウンドチェックに出てくるたび、SEの楽曲が終わるたび、会場が拍手と大歓声、そしてBABYMETALコールに包まれる。筆者の隣にいたイギリス人と思わしき白人男性は、肩が触れるとハッキリ分かるくらいに雨で濡れていたが、そのまま2時間も立ちっぱなしで、目を輝かせながら開演を待ち望んでいる。

「これは凄いライブになる…」あの場にいれば誰もがそう思わずにいられないだろう。それくらいにBABYMETALは待ち望まれていた。「日本から来た噂の色モノをためしに見てやるか」といった雰囲気は、少なくとも筆者のいた一階フロア中央以前には存在していなかった。むしろ、BABYMETALが日本人だということすら意識されていないようだった。

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Photo:Dana (distortion) YAVIN

MCなし、バンド生演奏による本物のバンドサウンド


ここでBABYMETALを聴いたことのない読者のために、彼女たちの現在のライブの特徴を記しておくと…

・基本的に「神バンド」と呼ばれるバックバンドが生演奏を行う
・持ち曲がアルバム1枚分程度しかないため、毎回似通ったセットリスト
・MCはしない
・MCのかわりに「紙芝居」と呼ばれる、会場ごとに作られるストーリー仕立ての短い映像演出で煽りや告知が行われる

といったところで、この日もバキバキの照明に、キレッキレのダンス、超テクニカルなバンド演奏というBABYMETALの2014年型パフォーマンスに異状なし。

だが、このロンドン公演では大きく2つ印象的なポイントがあった。

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Photo:Dana (distortion) YAVIN

おそらく日本では体験できない、本場イギリスの音響


まずサウンド面。これが彼女たちのライブを観るのが3回目だった筆者としては、とにかく「音が良かった」という印象が強い。広すぎない会場の規模感もあるだろうが、やはり240Vというイギリスの電圧が影響しているようにも感じられた(日本は100V、アメリカは120V)。一般的に電圧が高い方が音質的利点は大きいとされ、日本においてもレコーディングスタジオなどでは特殊な機材を導入して200Vを採用しているケースも見られる。

もちろん個人の印象だが、特にギターの音抜けが段違いに良く感じられた。またメインボーカルSU-METALのマイクのイコライジングもやや低域重視だった印象があるが、この辺はやはり洋楽慣れしている現地リスナーに合わせているのかもしれない。

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Photo:Dana (distortion) YAVIN

多様なトライブが一つになる感動


そして何よりもこの夜のライブで印象的だったのが、アイドル+メタル+ダンスというBABYMETALの本質が浮かび上がるような、多種多様な人間が集まったライブ会場だったということだ。あくまで感覚値だが、集まった観客のうち日本人はわずか0.5〜1割未満程度。3割はメタラーで、アニメやビジュアル系などの日本カルチャーファンが1〜2割、その他のオーディエンスが4割程度という印象。日本のライブで見られるような小さな子供こそいなかったけれども、老若男女の幅は広く、肌の色だけでなく趣味趣向も含め、広い意味で人種の多様性に富んでいる印象だった。

そんな多種多様なトライブが、現地イギリス人ではない15〜16歳の日本人少女3人+白塗りの凄腕バックバンドのライブに集い、ジャンルや人種の壁など関係なく歌い、モッシュし、キツネサインを振り上げているのだ。

「BABYMETALほど、平和の上に成り立ち、平和をリプリゼントしている音楽は、世界中を見渡しても無いかもしれない」

…妄想が過ぎるだろうか? しかし、真剣にそう思わずにいられなかったし、今もそう思っている。サウンドの面白さやキャラクター、トータルパッケージとしてのクオリティーもさることながら、筆者がBABYMETALにおいて一番好きなのは、彼女たちがこれまでつながらなかった何かをつなげているところかもしれない。



2014年のワールドツアーを締めくくる待望の新曲発表


すでに各メディアで報じられている通り、このロンドン公演における最大のトピックは、約1年ぶりとなる新曲「タイトル未定(THE ONEと仮称されることが多い)」の発表だった。新曲披露前、2015年の新展開と新曲演奏を予告する「紙芝居」の最後は「We will become… THE ONE」というメッセージで締めくくられていた。

新曲はBPM220オーバーという超高速な「メロディック・スピード・メタルとアニソンが融合したファンファーレ」とでもいうような曲。「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→ソロ→Dメロ→サビ→アウトロ」とプログレッシブな展開で、サッカースタジアムで合唱されるようなシンガロングパート(Cメロ)では、観客全員が初めて聴く楽曲にもかかわらず合唱が巻き起こっていた。

この会場にこの面々が集まる瞬間は、この夜一度きりしか無いだろうし、全員がこの曲を初聴であるという瞬間ももう二度と来ない。同曲はすぐにネットで共有され、次のライブまでには多くのファンが聴くことになるからだ。そうした状況も踏まえ、まさしくこの楽曲、この夜は「THE ONE」という言葉そのものだった。

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そして、今後そういった一度きりの光景が何度も作られていくのだろう。ジョージ・オーウェル『1984』風の「紙芝居」の内容、そして繰り返される「レジスタンス」というワードからして、おそらく2015年のBABYMETALは、ネットでは共有し切れないものをオファーすることを一つのテーマとしていくはずだ。

ひとまず次なるメジャーアクションとしては、1月のさいたまスーパーアリーナ公演が控えているようだが、洋楽を中心的に扱っているこのAMPとして注目したいのは、なんといっても今後の海外展開だ。1月にリリースされるライブCD「LIVE AT BUDOKAN 〜RED NIGHT〜」では、マスタリングを、グラミー賞受賞経験もあるニューヨーク・スターリングサウンドのテッド・ジェンセンが手がけているという。海外メジャーとの契約も噂されるなか、こうした動きは、さらなる本格的海外進出への布石のように感じられるのだ。

史上もっとも世界に進出し、受け入れられている日本のポップミュージシャンとなりつつあるBABYMETAL。AMPでは彼女たちの展開を今後も追っていきたい。

…それと、個人的には『BABYMETAL』のアナログレコード化をお待ちしております。

(照沼健太)
Special Thanks:池田さん、伊藤さん









BABYMETAL

BABYMETAL

TOY’S FACTORY
2014

Amazon MP3 & CD
iTunes

照沼健太

AMP編集長。好きな音楽は、インディーを中心としたリアルタイムなポップ・ミュージック全般と、50年代のロックンロール。
LINK:Twitter

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