今聴くべきノイズミュージック ベスト10 by 久保憲司

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大阪で「リローデッド」というノイズやニュー・ウェイブの頭のおかしそうなアーティストを中心とした写真展をやるので、ノイズ・ベスト10をやらしてもらえることになりました。ちなみに「リローデッド」は写真集『ローデッド』からの写真展です。

1. Throbbing Gristle – Discipline




ノイズの帝王といえばスロッビング・グリッスル。コンセプトから何から何まで完璧でした。彼らの“気分は最終戦争”というアーミー・スタイルもかっこよかったです。

このカルト集団のようなスタイルの元ネタは、フランスのプログレ・バンドのマグマや、グレイトフル・デッドかもしれませんが、スロッビング・グリッスルにヒッピー臭さがなかったのは、彼らがパンクを通過していたからでしょう。それは新しいノイズ、現代音楽の誕生だった。同世代の若者に多大な影響を与えた。インテリのおもちゃになりやすい現代アート、現代音楽は、パンクを通過してリアルなストリート・アートになったのです。

YMOがバンドを結成した時に横尾忠則を入れていたのは、スロッビング・グリッスルのメンバーに元ヒプノシスのピーター・クリストファーソンがいたからだと思います。セックス・ピストルズのデザインで少年愛なイメージのデザインをやっていたのがピーター・クリストファーソンです。アートワークも完璧でした。デレック・ジャーマンともリンクし、イギリス・ロック史いや、世界のロック史の中から決して忘れてはならないグループがスロッビング・グリッスルなのです。

この曲は「ディシプリン」(規律)と歌っていますが、これはジェネシスが相方コージーをクリスに取られて「(バンドには)規律が必要」と歌っているようにしか聞こえません。世界最強のコンセプチュアル・バンドも内輪のゴタゴタで崩壊するという、そんなことまで学生運動やカルト宗教と同じかと笑ってしまいます。

2. Cabaret Voltaire – Nag Nag Nag




スロッビング・グリッスルと並ぶノイズの2大巨頭といえばキャバレー・ボルテール。ダダイスムの拠点だった社交場の名前を頂いたバンド。当時はこういうことがかっこよかったです。バウハウス、デュルッティ・コラム、ハシエンダ、あの当時は過去のアートやイデオロギーがロックに雪崩込む感じがかっこよかった。

そういうことってもう全部消費されてしまったのでしょうか? そんなことないしょ、もう一回やりましょう。何度でも。亡霊のようによみがえらせましょう。

そして、革命だ!あの頃は世の中変わるんじゃない?という空気にあふれてました。2000年代クラブ・シーンで始まったニュー・ウェイブ・リヴァイバルの音の感じとは、まさにこの曲でした。こういう感じでよみがえっていくのです。そして、今ノイズはチル・ウェイヴを通過して、また若者の心を捉えていっているみたいですね。

‪3. Einstürzende Neubauten – Z.N.S‬‬



‬‬
80年代のロック・シーンに一番影響を与えたノイズといえば、アインシュテュツェンデ・ノイバウテン。スロッビング・グリッスルやキャバレー・ボルテールは学生運動の生き残りがパンクに影響されて活性化したという感じがありましたが、ノイバウテンは僕らの世代のノイズという感じがしました。

ジーザス&メリーチェインがなぜノイズを出したかというと間違いなく彼らの影響です。ある意味ノイズはシューゲイザーのお父さんでもあるのです。冷戦時代、西ドイツの若者たちは徴兵を逃れて社会主義の中にポツンと残された資本主義の孤島ベルリンで、スクワットをしながら、こういう音楽を作っていたのです。映画『ベルリン・天使の歌』が作られる原風景です。

4. DAF – Der Mussolini




ドイツのバンドをもうひとつ。生ドラムとコルグMS−20のシンセの音、そして、ヴォーカル。このバンド編成、当時でも10万円以内で出来たのではないでしょうか。ノイズとはひ弱いものと思われるかもしれませんが、肉体的な音楽だったのです。社会の抑圧から戦うためには音と肉体しかなかったのです。

5. Foetus Art Terrorism – A.Calamity Crush




イギリス、ドイツの狂気と来たから、アメリカの狂気をと思ったのですが、ノイズではアメリカよりやばかったのがオーストラリアでした。やっぱり島流しにあったような人たちの子孫の音楽は怖いすね。

ジム・フィータスはヒップホップを誰よりも早く取り入れたのもかっこよかったです。

フュータス・アート・テロリズム、宇川くんのルーツのような名前ですね。違うか、アタリ・ティーンエイジ・ライオットか。

6. 非常階段




イギリス、ドイツ、オーストラリアと来たので、次は日本を。日本は実はノイズにとってとっても重要な国なのです。ジュリアン・コープの名著「ジャップ・ロック・サンプラー」では日本のロックの歴史はノイズから始まってます。小野洋子さんや東京芸大の音大生らが作品を発表していた表参道の草月会館から全ては始まったという書き方はなかなか感動的です。そして、この流れがジョン・ケージ、ラ・モンテ・ヤング、ソニック・ユースと見事につながっていく。なるほどなと感動させられます。で、ビートルズにもつながると。

ドイツもそうなのですが、第2次世界大戦に負け、西洋文化から排除された国は自分たちのアイデンティティを証明するために、西洋音階から逃げなければならならずノイズに走ったというジュリアン・コープのノイズ論はエキセントリックです。でも、これで、戦後なぜ日本とドイツからこんな変な音楽がたくさん生まれたかという説明になります。じゃイタリアからなぜ変な音楽が生まれなかったか、その説明はマーティン・スコセッシのイタリア映画に関するドキュメンタリー「マーティン・スコセッシ 私のイタリア映画旅行」を見ればよく分かる。イタリアは第2次世界大戦についてはとにかく謝ることにした、そして、出来るだけ早く私たちもあなたたちと同じ西洋文化の一員なのだということを理解してもらおうとした。それがイタリア・ネオリアリズムになったと。イタリアン・プログレはクラシック的なのはそういうことなのだろう。「タクシー・ドライバー」を観たら同じイタリアの血を持つスコセッシはそんなイタリアの考え方を糞食らえだと思っていたのだろう。「タクシー・ドライバー」はドイツのノイズや日本のノイズのような芸術だ。



非常階段がアイドルとやる時代、それは日本の空虚なのだ。戦後の日本の中心にはぽっかりと空いた皇居という穴がある、みたいな文化論を言うのはやめておこう。みんな昔からノイズは好きだったのだ。シルク姉さんもそうだった。本当かどうかはさだかではないが、そういう噂はある。調べておきます。

7. The Beatles – Revolution Number 9




ビートルズのノイズは良くないと言われるけど、ぼくはミュージック・コンクレート(当時はそう呼ばれてました)の中で一番ポップで良いんじゃないと昔から思ってました。これはジョン・レノンの作品ですが、元々はこういう音楽に興味を示して作っていたのはポール・マッカートニーです。負けず嫌いのジョンが「俺もやる」と作った作品。ポールはこういう音楽はビートルズにはふさわしくないと発表しないことにしてたんですが、ヨーコさんに影響されていたジョンはむりやりビートルズのアルバムにねじ込んだ。ミュージック・コンクレート(コンクリート)って、まさにこちらもシューゲイザーのルーツのような名前ですな。

8. Crass – bloody revolutions




ディス・ヒートにしようかと思っていたんですが、Crassを。ディス・ヒートもCrassもヒッピーの生き残りが音楽をやったという感じがしますね。スロッビング・グリッスルと同じように後の音楽に思想的に多大な影響を残した。この音が欲しくって、ジーザス&メリーチェインはデビュー・アルバムをクラスのコミューンのようなスタジオで録音した。

9. 23 SKIDOO – Coup



 
最後から2番目は僕の一番好きなバンドを。ケミカル・ブラザーズにサンプリングされたことで有名ですが。スロッビング・グリッスル、Crassがやっていたことを本当におしゃれにやっていたのは彼らだった。若いということだったんですけどね。

若いって重要ですね。だからこんな古い音楽がどうのと言っていても何の意味もないんですけどね。

23スキドゥーいう名前は1900年頃にアメリカで流行ったフレーズで、早くとかという意味、NYの23ストリートのビル風でスカートがめくれることなどを意味しているそうですが。、今となっては何で面白いのか、シャレていたのか、誰も分からないそうです。ラッスンゴレライみたいなものです。それを神秘主義で陰謀論の妄想に取り付かれているウイリアム・バロウズが、23には不思議な力があると思って、それがいろんな人に伝播して、23はすごい数字だという妄想にハマってしまったということです。



ついには「ナンバー23」という映画まで作られてしまいました。いや、それウイリアム・バロウズのただの妄想ですから。アンディ・ウェザオールもハマってました。23という数字が出てくると「おっ」と言ってました。みなさんも23という数字を気にし出してみてください。23という数字がよく出てくるということを不思議に思うでしょう。なぜ、14じゃないのか、なぜ38じゃないのか。

その答えは、単純にあなたが23という数字に気をつけているだけなんですけどね。試しにやってみてください。

10. Lou Reed – Metal Machine Music




やっぱ最後は最強のノイズを。なんでこんなのやったのか分かんないですね。レコード会社への嫌がらせと言われていますが、そんなことないでしょう。向こうのレコード会社は売れないと思ったものは出さないということを普通にやりますから。

ルー・リードの機材はNYの最高のスタジオ・ミュージシャンの機材もびっくりなセットなので、彼がいつも求めているのは究極のhi-fiサウンド、これは彼にとって最高の音なのです。

子供の頃、これを聞いてよく昼寝をした。というのは嘘で、当時このレコードは中古屋で1万円もして手が出ないレコードだった。キャッシャーの上に飾っていて、聞きたくって仕方がなかった。今から考えるとあんだけレコード買っていたんだから、「ちょっと聞かせて」と頼めばよかったと思うんだけど。あの頃は音楽はそんなに簡単に手に入るものじゃないと思っていたのでしょう。


(久保憲司)

久保憲司

カメラマン&ライター。「ダンス・ドラッグ・ロックンロール ~誰も知らなかった音楽史~」発売中。なんとNO2も出ました。「ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム」 電子書籍「ロックの闘争」お仕事の依頼はkenji.kubo@m6.dion.ne.jpまで。

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