「今のエレクトロニックミュージックは悲惨」スクエアプッシャー、音楽を取り巻く現況を憂う最新インタビュー

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すべてワンテイクでレコーディングされた最新作『Damogen Furies(ダモジェン・フューリーズ)』リリースした、現在進行形のエレクトロニックミュージックの大御所スクエアプッシャーことトム・ジェンキンソン。11年振りとなる単独公演とフェス出演で来日したトムへのこのインタビューは、新作『Damogen Furies』における2大トピック「一発録音」「新開発したソフトウェア」を話題の基本軸としながら、トムが現在のエレクトロニックミュージックをとりまく問題を鋭く指摘・提起する内容となった。真剣な眼差しで、ひとつひとつの質問に言葉数を選びながら答えるその姿に、エイフェックス・ツインとともにエレクトロニックミュージックの未来を切り開いてきた男の貫禄と気骨を感じたが、ミュージシャンだけでなくリスナーにとっても賛否の意見分かれる内容かと思われる。あなたはどう感じるだろうか?(照沼健太)

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与えられた状況の中で最善のものを作り出す、ということ


■新作のトピックとして「一発録音」が挙げられますが、これは「はじめに楽曲の完成形を作ったうえで、その曲を構成する機材群を机に並べ、各機材を操作してミキシングしたり、エフェクトをかけたりした」ということなのでしょうか?

うん、その通り。曲ができた段階で基本的な構成や音は決まっていて、レコーディング時にはその楽曲を演奏させながら、リアルタイムにその場での感覚で変化させていったんだ。

■レコーディング時に「腕が4本くらいあれば」とか思いませんでしたか?

もちろんリアルタイムでもっと色々コントロールできればとは思うよ。でも「アレができれば…、コレができたら…」なんて考えても仕方ないさ。僕は与えられた状況の中で最善のものを作り出すことに意識を集中するようにしているよ。

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市販の音楽制作ソフトは狭い牢屋のようなもの


■「一発録音」と同様に「独自に開発したソフトウェア」の存在もトピックですね。本作は非常にアグレッシブな楽曲が詰まった作品ですが、ソフトウェアの作りと関係があるのでしょうか? それとも気分なのでしょうか?

いや、ソフトウェアは関係ないな。自分が「こういう曲や音を作りたい」と思ったからこうなったんだ。あくまでソフトウェアはその音のイメージをかたちにするための道具でしかない。サウンドを決めるのはテクノロジーだと考える人は多いし、もちろんそうであることも多いとは思う。でも、僕は自分がそうしたテクノロジーや機材に支配される音楽の作り方ではなく、自分が機材を支配して「思い描いた音」を作るというやり方をするんだ。だから何かしらの機材を使うときは、可能な限りその機材でできることを理解して、自分の思い描いた音を効率よく作れるようにしている。

■その新開発のソフトウェアは本作のイメージを具現化するために作られたものなのでしょうか?

もともとソフトを開発しようと思ったのは14年くらい前に遡るんだ。ライブパフォーマンスをするためのプログラムとしてね。だから、新作は「ライブパフォーマンスのためのソフトウェアで行ったパフォーマンスを記録した作品」なんだ。ソフト自体はずっと自分で開発・発展させてきたもので、それだけで作った作品は以前には無かったけど、これまでの作品でも使ってきたんだよ。そして、これからもさらに発展させようと思っている。

■エレクトロニックミュージックのライブパフォーマンスで使われるソフトウェアとしてはAbleton Liveが代表的ですが、そういったソフトウェアに不満があったということなのでしょうか?

うん、まったく満足していなかった。もちろんそうしたソフトウェアはなんらかの可能性を提供しているだろうし、それを使って良い音楽を作れないとは思わない。でも自分には拘束着のように思えるんだ。自分が求めているものは、もっと限りない可能性を追求できる大きなオープンスペースのようなものだ。けれども市販のソフトウェアは狭い牢屋のようなもので、メーカーの意向に縛られるだけのように感じられる。だから自分はそうしたソフトウェアは使いたくないんだよ。

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今の多くのミュージシャンは機材をデモしているだけ


■エイフェックス・ツインもソフトウェアを開発していますよね。それについては必然的な流れだと思いますか?

うん、彼もソフトウェアを開発しているね。でもそれが必然的な流れだとは思わない。例えば昔の僕は、古いAKAIのサンプラーをはじめとした機材を使って新しい音を生み出していた。だから必ずしも新しいテクノロジーに頼らないと新しい音楽を作れないわけじゃない。2009年にも僕はエレクトリックベースという古い楽器の可能性を求めて『ソロ・エレクトリック・ベース1』という作品をリリースしたしね。あくまで今現在の個人の嗜好として、新しいプログラムで新しい音を作ることに意味を見出しているということさ。

■「頭の中に求めるサウンドのヴィジョンがあって、それに近い音を出せるように機材やソフトウェアを操作する」とあなたは言いますが、今のエレクトロニックミュージックには、ソフトウェアに組み込まれた膨大なプラグインをいじっているうちに、なんとなくできたような「素材」以上「楽曲」未満のトラックが多いようにも思えます。そうした意見についてどう思いますか?

今のエレクトロニックミュージックは悲惨な状況だ。今のミュージシャンには選択肢が大きく分けて2つある。テクノロジーを司るか、テクノロジーに支配されるかのどちらかだ。今の多くのミュージシャンは音楽を作っているのではなく、メーカーが作った機材をデモンストレーションしているだけだ。音楽機材メーカーたちの業界に根付いている「常に新しい機材を売らなければいけない」という商業主義システムに、ミュージシャンが囚われの身になってしまっているんだ。そうしたミュージシャンは何かを発信しているんじゃなく、ソフトや機材に組み込まれた音を鳴らしているだけだ。

自分はそうしたことや、そういうミュージシャンの音楽には興味が無い。サウンドの裏にある生身のミュージシャンが訴えているものに興味があるんだ。そのためには生楽器だろうと電子楽器だろうと関係ない。ミュージシャン自身が何を発しているのかが伝わる音楽を聴きたい。そしえ、そうした音楽を作るには扱うテクノロジーをマスターしないといけないんだ。でも残念ながら、今のエレクトロニックミュージックを聴いても、ほとんどメーカーの作った音しか聴こえてこない。

■昨年のエイフェックス・ツイン『Syro』はそうしたサウンドと対極にあるように感じました。あなたは聴いてどう思いましたか?

それについてのコメントは避けたいな。

■ちなみにここ日本ではアルカ『ゼン』も同じように話題になりました。聴きましたか?

いや、知らない。



■機材メーカーの「新しい機材を売らないといけない」というサイクル同様、レコード会社にも「新しいレコードを売らなければいけない」という事情があります。あなたはele-kingにおける本作についてのインタビューで「よほど新しいアイデアが生まれないと新しいレコードを作ろうとしない」旨の発言をしていましたが、長年の関係であるWARPからは、新作の制作依頼や締め切りのようなものは提示されないのでしょうか?

ない。あくまで自分が作品を出したいときに出すんだ。

■ところで自分の過去の作品を聴いたりしますか?

いや、聴かない。

■最後に、本作であなたを知って気に入った若いリスナーのために、次に聴くべきスクエアプッシャーの作品を教えていただけますか?

どの部分を気に入るのかは人それぞれだろうし、自分からはコレだとは選べないな。…当てずっぽうでどれかの作品選んでみてほしい(笑)

(取材・文:照沼健太)

Squarepusher

Damogen Furies

Warp / Beat
2015

Amazon MP3 & CD
iTunes

照沼健太

AMP編集長。好きな音楽は、インディーを中心としたリアルタイムなポップ・ミュージック全般と、50年代のロックンロール。
LINK:Twitter

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