イギリス最大の狂騒ムーブメント『マッドチェスター』ベストソング10曲 by 久保憲司

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お待ちかねかどうか分かんないですけど、マッドチェスター・ベスト10をやりたいと思います。今から26年ほど前に、突然エクスタシーというドラッグがイギリスに入ってきてイギリス中が踊り出したという、とっても奇妙なムーブメントだったのですが、今にもつながるとっても重要なムーブメントです。2010年頃からついにエクスタシーの影響はなくなったかもしれません。でも、若者に20年近くも影響を与えたムーブメントが他にあったでしょうか? パンクくらいですかね。‬

エクスタシーというドラッグは本当に変なドラッグで、流行り始めの頃は服屋さんでも店員がカウンターの上で踊ってるし、クラブからはお酒がなくなって、コーラと水とオレンジ・ジュースしか売ってなくなったりしました。水だとトイレでタダで飲めるんで、ドリンクの売り上げが上がらないから、トイレの蛇口をワイヤーでくくっていたりして、俺は「明日のジョーか」と叫びました。イギリス人はホンマに酷いですね。

こんなアホなエピソードはおいといて、エクスタシーは60年代のLSDと同じくらい若者の意識を変えたドラッグでした。そして、それに反応するかのようにいろんなロックバンドが自分たちのスタイルを変えていった。それを『マッドチェスター』と呼んだのです。

1. The Stone Roses – She Bangs the Drums‬




マッドチェスターといえばこの人たち。この一大ムーブメントがなんとなく始まったように感じる人も多いと思いますが、ストーン・ローゼズの「新しいレコードに新しい針を落とそう、地球が動き出すぞ」という歌詞を聴くと、「お前らすべて分かってたのか」とゾクゾクします。分かってたんでしょうね。

60年代がLSDによって全てが変わったのを理解していれば、エクスタシーという新しいドラッグがあれば世の中変えれると彼らは知っていたのでしょう。彼らのデビュー・アルバムの20周年記念の再発のスペシャル・サンクスのクレジットには「エクスタシー」と書かれています。かっこよすぎです。




‪2. Happy Mondays – Wrote For Luck‬‬‬




そして、本当にドラッグを売っていたのが、このハッピー・マンデーズのショーン・ライダー。前にアンディ・ウェザオールが「ハシエンダでDJしても受けなかったのが、毎週DJしにいっているとだんだんと受けるようになったてきた。その中心を見るといつもショーン・ライダーがいた。あいつ売ってたんだよ」と言ってました。

ミュージシャンが売人というのはすごい時代が来たもんです。でも、誰か広めるやつがいないとダメなんです。ショーン・ライダーも自伝で書いてます。彼の芸名は昔Xという名前だったのですが、それは昔マリファナを売っていた頃、友達が「おい、ショーン」と呼ぶのを「ばかやろう、こんな所でおれの本名言うな。」「えっーなんて言わないとだめなの」「Xと呼べ」と。「お前は銀行強盗か」とツッこんでしまいたくなります。ファースト・アルバム(だったかな?)にXと書かれていたのはそういうことなのです。Xってw




‪3. The Charlatans – The Only One I Know‬‬‬




3大マッドチェスター・バンドがあるとしたら、間違いなくザ・シャーラタンズはそのうちのひとつでしょう。といっても「3大」という表現は日本だけなんですよね。あんまり外国ではそういう言い方いいません。今の日本の若い人もそんな表現使わないですか?

マッドチェスターのバンドの中でSNSをちゃんと使いこなしているのはシャーラタンズのヴォーカル、ティム・バージェスだけです。ティム偉いですね。ルックスも全然変わらないのがかっこいいというか怖いす。




4. Inspiral Carpets – This Is How It Feels




3大ということなら、本当は僕はインスパイラル・カーペッツを押します。しかし、ショーン・ライダーはインスパイラル・カーペッツのことが大嫌いで、彼らがTVとか出たらすごくムカついたみたいで、彼らの事務所に「お前らみたいな世界一ダサいバンドがマンチェスターにいるとマンチェスターが汚れる。死ね」というファックスを送りつけていたそうです。もちろん匿名で。どんなアーティストやw するとすぐに「うるさい死ね」と返信されてきたので「アーティストの癖になんて下品な言い方なんですか」(お前もなw)と送り返すと「うるさい死ね、ボケ、カス」と送り返されてくるので、むかついていたそうです。今のツイッターみたいなことをやっていたんですね、この人たち。進んでいる。

そして後日、ファックスを送っていた人間は当時インスパイラル・カーペッツのローディーをやっていたノエル・ギャラガーと判明、二人は和解したそうです。ホンマどうしようもない奴らです。こいつらが出てくるまで、マンチェスターといえばジョイ・ディヴィジョンやACRに代表される無口で高尚なバンドだったのに、マンチェスターの本当の姿がバレてしまったやないか。これもマッドチェスターの成功の原因かもしれません。嘘をつかない、正直でいる。それもエクスタシーの効果のひとつです。




5. My Bloody Valentine – Soon




今から考えるとダンス・ミュージックに一番意識的だったのはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのような気がします。

次に紹介するプライマル・スクリームは、自分たちのレーベルのオーナー、アラン・マッギーに言われてしぶしぶアンディ・ウェザオールに「I’m Losing More Than I’ll Ever Have」をリミックスすることを頼むのですが、出来た曲を聴いて、アンディに「お前大変なことやっちまったな」と怒ったそうです。全く分かってなかったんですね。そこへ行くと多分、ケヴィン・シールズはこれはすごいと自分で作り出すんですよね。コルムのドラムがドラム・マシーンに変わっただけですけどw でも、後にドラムンベースも取り入れようとしたケヴィン・シールズのセンスの良さが伺えます。




6. Primal Scream – Loaded‬‬




名曲です。でも、これ今考えると23スキドゥーの「Coup」をやろうとしてたんだなと気付きました。リミキサーのアンディ・ウェザオール、どんだけポスト・パンク好きやねんというのがよく分かります。僕もアンディと同世代なのでよく分かります。マッドチェスターもしっかりと歴史とつながっているということですね。



もちろんこの曲のすごいところは、イージーライダーよりも前にカウンター・カルチャーに影響を与えたワイルド・エンジェルスのピーター・フォンダの「準備はできたぜ、楽しもうぜ」というサンプリングが、まさにエクスタシー世代の到来を予言するかのようだったからです。歴史は繰り返されるのです。




‪7. Flowered up – Weekender‬




ロンドンのハッピー・マンデーズのと言われていたのがこのフラワード・アップ。ダンサーもいました。バリー・ムーンカルトで、この人こそ、ベズよりもピエール瀧のルーツ、ケンタウロスのヌイグルミ着て踊ってたんですよね。瀧さんもフラワード・アップのライブ見てたんで影響されたかもしれません。これは一度確認したいと思ってます。僕が見た時は花の格好していたので、「ピーター・ガブリエルか、アシッド・ハウスには合ってないな」と思ってました。このPVむちゃくちゃかっこいいんです。ガイ・リッチーの前にガイ・リッチー風に、レイブとは、エクスタシーとはなんなのか見事に描いているんです。「さらば青春の光」のアシッド・ハウス版の感じもかっこいいです。

僕はロンドン子だったので、ハピマンよりフラワード・アップの面々と気が合っていました。フラワード・アップのマネジャーは元パンクで、ジョー・ストラマーにすごく気に入られていて、クラッシュの映画『ルード・ボーイ』にもちょい役で出てます(このPVにも出てます)。そんな関係でジョー・ストラマーがすこし詞を書いたフラワード・アップの曲があるんですが、やっぱつながっていますね。




8. Paris Angels – All on You (perfume)




マッドチェスターの中であんまり知られてないバンドで僕のお気に入りはこのバンドです。アンダーワールドの「Rez」前にこれやっているのがかっこいいでしょう。しかもそこにニュー・オーダーな感じを乗せているのも。


9. Northside – Shall we Take a Trip




チャッチャッチャッチャッチャチャ、チャチャチャチャー、チャーー L 、チャッチャッチャッチャッチャチャ、チャチャチャチャー、チャーー S 、チャッチャッチャッチャッチャチャ、チャチャチャチャー、チャーー Dーーーー というのがバカっぽいでしょう。

しかも続く感じがネオアコみたいな感じで。でも、僕はオアシスのルーツはこいつらかなと思っているんです。レコードの頃はポップな感じだったんですけど、日本に来た時はマッドチェスターにセックス・ピストルズな感じを取り入れていて、今思うとそれはオアシスぽかったなと思うんです。当時誰もパンクなんか取り入れようとしてませんでしたから。




10. The Mock Turtles – Can You Dig It?‬‬




最後はエヴァー・グリーンなメロディで。マッドチェスターはロックがダンスを取り戻そうとした動きと思われているんですけど、スウィートなメロディも取り戻そうとしたムーブメントだったんですよね。




(久保憲司)

関連作品

Oasis

Definitely Maybe
Creation / Sony
1994

Amazon MP3 & CD
iTunes

90年代を代表するUKロックバンド オアシスのデビュー・アルバム。2014年には発売20周年を迎え、世界的な再評価が高まっている。

The Stone Roses

The Stone Roses
Sony
1989

Amazon MP3 & CD
iTunes

ザ・ストーン・ローゼズのデビュー・アルバム。リリース自体は89年だが、インディーとダンスの垣根を超え、90年代を定義付けたと言われる1枚。


久保憲司

カメラマン&ライター。「ダンス・ドラッグ・ロックンロール ~誰も知らなかった音楽史~」発売中。なんとNO2も出ました。「ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム」 電子書籍「ロックの闘争」お仕事の依頼はkenji.kubo@m6.dion.ne.jpまで。

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